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日本人成人の平均的な睡眠時間は8時間と言われていますが、5~6時間しか眠らなくても平気な人もいれば、10時間くらい眠っても満足できない人もいます。不眠症を中医は「不寝(ふしん)」と呼び、寝つきが悪い(入眠障害)、途中で目が覚めると眠れない(中途覚醒)、すぐに目がさめる(熟眠障害)、朝早く目が覚める(早朝覚醒)、覚醒時の不満足感、不快感(寝起きが悪い)なども含みます。不眠症の原因は、環境の変化などの生理的なもの、ストレスや緊張の積み重ね、うつ病、疼痛や発熱、脳腫瘍など、数多くあります。肝火(心熱を併発することもある)や痰濁が原因の場合は入眠障害が多く、血虚や腎虚の場合は熟睡障害や早朝覚醒が多く見られます。うつ病などでは早朝覚醒も認められます。現代日本のストレス社会では、ますます不眠傾向がおおくなっているようです。またうつ病との関係も見逃せません。うつ病については、本ページの中の鬱症を参考にしてください。
不眠症のタイプ
肝火タイプ
入眠障害 イライラ 怒りやすい 頭痛 眩暈 目の発赤 耳鳴 脇痛 口が苦い 舌質紅 黄苔(舌のこけが黄色い) 脈弦数などの特徴があります。
ストレスなどの精神刺激が誘発となり、さらに増悪要因となります。
竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃがんとう)や柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが効果的です。竜骨、牡蠣、珍珠母などの重鎮安心薬が効果的です。
痰熱タイプ
熟眠障害 多夢 よく眼が覚める 胸のつかえ 頭重感 痰が多い 舌質紅 黄腻苔 脈滑数などの特徴があります。
飲酒 過食 脂肪分の多い食事などが誘発となり、さらに増悪要因となります。
黄連温胆湯(おうれんおんたんとう)や竹茹温胆湯(ちくじょおんたんとう)などが効果的です。
陰虚火旺タイプ
イライラ 早朝覚醒 腰や足のだるさ痛み、手や足の裏のほてり 寝汗 喉が渇く 眩暈(めまい) 健忘 時に夢精 紅舌 少苔 脈細数などの特徴があります。
六味地黄丸、天王補心丹、黄連阿膠湯(おうれんあぎょうとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)などの組み合わせが効果的です。
心脾両虚タイプ
入眠障害 多夢 覚醒しやすい 動悸 健忘 自汗 顔色が悪い 食欲不振 軟便気味 舌質淡 薄白苔 脈細弱などの特徴があります。
帰脾湯(きひとう)が特に有効です。

不眠 冷え症 化膿性の湿疹が改善したC子さん44歳の場合
C子さんは、数年来の不眠症で特に寝つきが悪く、睡眠導入剤(デパス)と睡眠維持剤(ネルボン)を飲まないと眠れないという状態が続いていました。また、背中、臀部に湿疹ができて、化膿する傾向もあります。月経前の乳房の張った痛みも強く、生理痛もありました。同時に冷え症もあり、特に手や足の指先の冷えを訴えていました。乳房張痛や化膿性の湿疹は、血熱や肝鬱化火の証と考えられます。しかし、冷え症があります。一見矛盾する証ですが、中医学では、真熱仮寒(しんねつかかん)といい、内熱があるのに四肢末端などが冷えるのを「熱厥(ねっけつ)」といい、決して矛盾する証ではありません。不眠症も肝火タイプと診断しました。生理痛があるために、丹梔逍遥散を投与、2週間ほどの服用で、不眠、生理痛、指先の冷えなどが改善しました。改めて漢方方剤の即効性を感じさせられた症例です。

不眠 インポテンツ 腹満 食欲不振 吐き気が改善した38歳の男性の場合
会社員のAさんは、性欲の減退や不眠などと共に、胃腸症状が出現してきたために漢方相談となりました。まぶたが張れぼったく、舌苔が黄白色で、厚く(腻苔)脈象は滑有力でした。脾虚が原因の痰濁が化火している証がそろっています、痰熱が上擾(じょうじょう)すると、不眠の原因ともなります。また、インポ傾向や胃腸症状は痰濁(たんだく)内阻(ないそ)の状態です。温胆湯に黄連を加味した黄連温胆湯を開始しました。2週後、不眠傾向は幾分治まったとのこと、しかし以前より、顔面筋肉のぴくぴくと痙攣する(特にまぶた)のが残存しているとのことで、胆南星を加味しました。2週後、まぶたのぴくつきがなくなったとのこと、竹茹温胆湯に変更し、さらに2週後、諸症は消失しました。
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